2017年はこてこてのエムソープで邁進するつもりです
MSOHPとは
MSOHPとは、Medical-Scientific Oriented Health and Productivity の頭文字を取ったもので、EBM(Evidence-Based Medicine)が根拠に基づいた医療なら、MSOHPは根拠に基づいた健康経営です。 はじめて聴きましたか?
それもそのはず、本郷で勝手に作った言葉です。
医療を「やる」のは主に医療機関の医療従事者ですが、誰でも健康経営を「やる」ことができます。 経営者、従業員が職場で「やる」のがざっくりいうところの健康経営Ⓡです。 EBMということばが取り沙汰されるということは、意外に医療がエビデンスに基づいていないってことです。 かなり一般的になったはずの現在でさえ、根拠のない医療者の言葉に一喜一憂している患者さんがたくさんいます。
「タンパク質が低いので、肉をむりやりたくさん食べている」 私「総蛋白ですか?」 pt.「タンパクの中のアブラなんとか・・・」 私「アルブミンですか?」 pt.「そうです!」
食べたタンパク質が血中に直接とけて血中タンパク質濃度を左右するわけでないのは、血中脂質を脂質摂取が左右しないのといっしょです。ものすごーく厳しい食事制限をしている糖尿病患者の血糖値はいつも高いのに、普通は、ケーキ食べ放題でしこたま食べても数時間後には血糖値が正常値に戻ります。
血中アルブミン濃度が必要以上に低いのなら、血中のアルブミンを作る肝臓の機能異常を疑うべきで、食生活が特別異常ではないのならせいぜい吸収障害ではないでしょうか。もちろん低栄養や炎症性腸疾患などでアルブミンは低値にはなりますが、あきらかに脂肪肝のおばさまです・・・・・・「アブラミン」が低いから、「肉の脂を摂れ」と医者に言われたそうですが・・・
「サプリメントが入っているからうちの水を飲むと健康になる。厚労省もみとめてます」 厚労省はなんらかの許可や認定を出したがためにこういう営業文句に使われるリスクに意識的ではあるんだろうけど、やっぱりいつの間にかこういう文言になってしまいますよね。おそらく、厚労省は「この水を飲むと健康になる」とは認めていなくて(厚労省は「健康になる」なんて定義をなにか特定の商品に与える機関ではありません)、この水の成分についてなんらかを認めているだけだと思います。サプリメントはもちろん、物質の名前ではありません。だから、「サプリメントを飲んだら健康になる」なんてエビデンスはこの世にないし、ましてや「サプリメントが入っている水を飲んだら健康になる」なんてロジック、成り立つわけありませんよね? たとえば、フッ素は虫歯を防ぐ効果があるので、フッ素入りの水なら虫歯に効果があるかもしれません。でも、漠然としたものが、漠然とした健康にいいなんて関係は、たとえば、「健康行動」とか「コミュニケーション」とか「SES」とかそういう漠然としたもの、かなり広い範囲のものであるはずで、疑わずに購入してしまうユーザーも共犯者だと思います。 飲料や食品に限らず、セミナーや宝飾品などでも「エビデンスがあります、大丈夫です」なんて宣伝しているのをイヤというほど目にします。大声で主張すればエビデンスが振ってくるわけではなく、「それはどんなエビデンスですか?」としっかり尋ねる勇気を持ちましょう。
「温かいお茶と温まるお茶」 寒い道で見つけた自動販売機に、二つの表記があったら、どちらを選びますか? 私なら温まるお茶です。温かいのはお茶で、温まるのは私です。これはウソでも何でもなく、後者が賢い表現なのだと思います。あったまるためにお茶を飲もうと思っているヒトの心は、後者のほうがつかみやすいでしょう。エビデンスがないと何も言えないのかというと、事実を用いて誠実に表現しても、よりよい選択肢は必ずあるということです。
詐欺とエビデンスの間
まるっきりインチキ、嘘っぱちの健康サービスを詐欺だとします。
詐欺によって、何かよいことがあるエビデンスは当然無く、なにも(よくも悪くも)なければいいけど、害になる(悪い)可能性さえあります。
よいかどうかが証明されていないものはたいてい、よくないとか、悪くないとかも証明されていないものですから、結果は誰も知りません。
先行薬剤よりよいだろうと期待して新薬を開発するのですから、自信があります。そこで実験をするのですが、当然、先行薬剤と効果が変わらない、それどころか別の副作用が多い、なんてことを証明されてしまう場合があります。巷のサプリメントみたいなものは、売っている本人が効くわけがないと思っている偽物ですから、実験なんかしません。エビデンスを得るための実験・研究には、途方もない時間やお金、手間がかかるのです。
「使った人の80%以上がもう一度使いたいと答えた」というのはエビデンスではありません。
無料で使ったモニターさんの20%弱が、「もう二度と使いたくない」と思う商品なんだな~ってことくらいしかわかりません。
その商品が「横顔美人度120%アップ!」などと書いていると、更にわかりにくくなりますよね(笑)どうやって計測するんでしょう・・・
実は、医療行為は、かなりの面でよくないどころか害になる性質を帯びています。
健康な人や当該疾患以外の人が不要なクスリを飲んでも、飲む前より健康になったり元気になったりすることはなく、副作用に苦しむ可能性のほうが高いです。
たとえば風邪症候群などでいたずらに抗生剤を出す習慣によって、耐性菌が増えて困っていますよね。不要な投薬が公衆衛生上の害にまで発展します。
しかし、特定の疾患や症状に対しては必要で効果的たり得るのが医療です。
詐欺の対極にはEBMとMSOHPがあって、どちらもエビデンスに基づいているけれど、医療には治療効果というアウトカムがあり、ヘルスプロモーションには経済効果というアウトカムがある、というイメージです。
そして、世の中のほとんどのサービスは詐欺とEBM・MSOHPの間にあるように感じます。
たとえば健保が支援している健康企業宣言ですが、これはまず、宣言することに意義があるので、宣言の時点でとても健康企業とは言えない実態だとしてもかまいません。なんといっても、健康保険組合のホームページ上、健康企業のページに企業名が掲載されるのですばらしいホワイト企業PR効果がありますので、宣言しない手はないともいえます。
仕事を探している皆さまは、ぜひ、検討している企業の所属健康保険組合を訊いて、ホームページをチェックして、掲載されている企業を選ぶようにしましょう。社会保険に加入していないと言われたら、その企業はブラック企業です。就職するのはよしましょう。このページにはお金を積む必要はありませんが、健保の取り組みなどについて意識的な企業しか掲載されません。なによりのホワイト企業スケールになるでしょう。それでも、真の健康企業になるべく、この後、まったく努力をしないのだったら、その企業は詐欺に近いのではないでしょうか。ご覧いただいてわかるように、ステップを進んでいくしくみになっていますので、宣言して数年間、進捗のない企業は怪しいと考えてもいいのかもしれません。
MSOHPが必要なわけ ヘルス&プロダクティビティ・プロモーションは誰がどこでやってもいいので、もちろん、個人単位で心の中でやるのも自由です。個人レベルのプロモーション、すてきなことですよね。 個人でも集団でも限られた枠内でヘルスプロモーション(健康向上・健康水準をあける)ためには、限られた資源(人・もの・カネ)の中で有効な方法を、法令や倫理・道徳にもとることなく実践しなければならず、そのためには緻密な計画が必要です。 そのためには現状の分析を行い、予防的介入法の有効性・安全性・経済性を客観的に検討する必要があり、過去において、実際に科学的なステップを経て評価された結果がエビデンスです。 エビデンスが生まれた状況とまったく同じ状況を再現することはできないし、それがベストかどうかもわかりません。 先行研究によるエビデンスはヘルスプロモーションのアウトカムを何に設定するのか、誰をターゲットにするのか、費用や時間、そして人はどれだけ割けるのか、こういう一つ一つの課題を解決するヒントです。 猿まねをすればいいというものではありません。 お金も時間も人も無尽蔵にあるのなら、ステキなことがなんでもできるでしょうけれど、ほとんどの場合、そうではないですよね。 企業の最終的な目標のひとつはCSRでしょうけれど、どういうかたちで社会に貢献したいのかは企業によって異なります。独自のミッションを遂行しつつ、ヘルスプロモーションをするためのさじ加減は、ヘルスプロモーションについてのエビデンスを知らない人がいくら考えても、浮かびません。 だからMSOHP。 企業に優秀な人はたくさん存在しているでしょうが、ヘルスプロモーションは業務ではないので、専門性がなくて当然です。産業保健部門などヘルスプロモーションに専念できる部署を持てるほど大きな企業であれば、ヘルスプロモーションのアウトソーシングは不要かもしれません。 それほど大きくはない少数精鋭企業が健康経営Ⓡにご興味を持った際には、ぜひ一度、MSOHPの利用をご検討ください。 難しいことは専門家が片付け、簡単なアウトプットを提供いたします。過去のエビデンスを活かして、一緒にこれからのエビデンスを作っていきましょう。
2017.01.05 15:26
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