スウェーデン発・世界的話題書 脳から足先まで完全爽快!
脳スッキリ
知識が記憶定着
体重減
ストレスに強くなる
新版・Sleep, Sleep, Sleep 熟睡者
書評です。
睡眠の素晴らしい点、私もいつも強調する点で、この本でも掲げられている最高の点は、
【毎晩無料で「とんでもない効果」が手に入る】ということ。
しかも、掛け金無料なのに、そのリターンが半端なくて、我ながら先日、「自己投資としての睡眠マネジメント」というタイトル、うまいこと言ったな、と思ってます。
そして、睡眠とは【24時間労働】という表現も面白いですね、労働かどうかはさておき、睡眠中はもちろん、目が覚めてから床に就くまで、睡眠じゃない時間のすべてが睡眠に影響する、というのも面白いところです。
時間をかけて、丁寧に読みましたが、とんちんかんなところは少なくて、非常によい睡眠指南の書だと思いました。
とはいえ、すごく目新しい話題があるというわけでもなく、語り口が好きな方はぜひ、こちらを楽しんでください。私は睡眠をコントロールしているのは自律神経であるというのが持論ですが、もちろん著者は「睡眠は脳がつくる」派です。睡眠中の中枢神経系の描写が多いので、脳科学大好きな方にはオススメです。
特筆すべきは、メラトニンについての各論が秀逸な点でしょうか。日本でもメラトニンの研究は現在でもすごく盛んで、先日の睡眠学会・日本時間生物学会合同学術大会でも、「睡眠/概日リズム研究の中のメラトニン」というシンポジウムがありました。
そうはいっても、コンビニでメラトニンサプリメントが手に入る欧米に比べると、まだまだ日本におけるメラトニンの認知度が低いのも事実です。
メラトニンはその血中濃度、分泌量が睡眠中にぐんぐん上がる、睡眠に関連の深いホルモンです。図のように、副交感神経活性と同じような傾向で、深部温や交感神経活性と正反対の日内リズムを持っています。
メラトニンを分泌する松果体は、両眼から入る光情報が集まって最大になる視交叉の真後にあります。だから光の情報をダイレクトに受け取って、光が入るとメラトニン分泌をやめようとします。また、睡眠中、一度、変曲点を迎えて、血中濃度や分泌速度が低下してからはじめての光刺激、つまり、起床後、はじめての光刺激によって、約15時間後の分泌タイマーをセットします。
この単純な2つの機構によって、メラトニンの日内リズムは維持されています。
メラトニンはセロトニンから作られますが、セロトニンを増やすには、日中、しっかり光を浴びることが必要です。メラトニンと光は、二重の意味で関係しています。
6時に起床してセットされたタイマーによって、21時に分泌を開始するときは、ほとんどゼロの日中の分泌速度の100倍以上の速度で分泌され、日中の血中濃度は10倍にもなります。ところが、そのタイミングで光刺激を浴びてしまうと、せっかくのメラトニン分泌が抑制されてしまいます。
メラトニンレベルが上がらなくても睡眠は可能ですが、メラトニンの仕事は眠気を作るだけでなく、細胞を修復して、私達を若返らせてくれることなので、血中濃度をあげないのは、とてももったいないのです。 睡眠には抗がん作用があるのは科学的に明らかですが、異型細胞を見つけて、退治してくれるのは、メラトニンです。賢いメラトニンは、がんを栄養する【新しい血管の成長を抑制することで、がんの計画の歯止めをかける】のだそうです。
メラトニンにはビタミンCの5倍の抗酸化作用があります。メラトニンはアルツハイマー病などの認知機能の低下を抑えることで有名ですが、この脳神経の保護作用もそうしたフリーラジカル除去効果に由来すると考えられています。また抗酸化作用に加えて、免疫抑制状態では免疫の強化、急性炎症のような激しい免疫反応のある場合では抗炎症に働くなど、免疫システムを調整する働きもあります。
睡眠の後半に発生するメラトニン分泌の変曲点が、睡眠の概日リズムを決めていて、この変曲点の時間が乱れると、概日リズム睡眠障害、すなわち時差ボケの原因になります。そのため、パイロットなど、職業上の理由によるSocial Jet Lugにはメラトニンの補充や光療法が古くから利用されています。メラトニン値は思春期に入る前にピークを迎え、30代でピークの3分の1、50代になると6分の1程度にまで減ってしまいます。欧米では日本に比べてメラトニンのホルモン補充療法が一般的です。メラトニンの補充療法には、ホルモン療法で最も避けたい副作用である、ネガティブ・フィードバックがないことも知られています。補充によって、天然の、本来のホルモン量が抑制されてしまい、分泌するべきときに分泌できなくなるようなことがないのです。
化学的に合成されたメラトニン受容体作動薬は、2010年にロゼレムという商品名で、日本ではじめて処方薬発売されました。昨年、2022年にはジェネリックが解禁されました。これはあくまでメラトニンの眠気作用を利用する意味合いなので、ホルモン補充療法とは異なります。
メラトニンの日内変動は、光によってコントロールが可能です。起床後、10時間程度はできるだけ明るい場所で活発に過ごし、起床後15時間以降は、明るすぎる光を見ないように気をつけましょう。また、起床直後には必ず自然光を浴びましょう。
書評というよりは、メラトニンの紹介になりましたが、光は私たち勤労者世代にとって、睡眠不足症候群と並んで最もメジャーな睡眠障害、Social Jet Lug 対策として非常に有益です。賢く光を操って、生産性高い日中を過ごしましょう。
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