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Yoko Ishida

パンデミックにおける自殺者数と失業率の関係

自殺者数と失業者数は、コロナ前、コロナ禍ともに関係しています。

多くの先行研究によると、失業者と比較して、労働者のほうが健康です。

職場のメンタルヘルス対策は重要ですが、雇用の確保はより切実に求められています。



 

Trends in Suicide in Japan Following the 2019 Coronavirus Pandemic コロナ禍の自殺者数に関する研究を紹介します。

コロナ前、自殺者数は減少傾向にありましたが、コロナ禍の影響で自殺者数が想定より増加していることは、メディアでも取り上げられています。

左上Aは、2009年以降の実際の男女別自殺者数と過去のデータからの推定値、Bは2020年から2021年までの男女別自殺者数と推定値、Cは2009年以降の実際の20代の男女別自殺者数と過去のデータからの推定値、Dは2009年からの失業率の推移です。



AにDの失業率を重ねたのが、こちらの図です。


そして、こちらが失業者数の推移です。

最後に男女別の前年同月比の就業者数の推移です。


コロナ禍が雇用に大きな打撃を与えたことは、皆さんの知るところですが、その影響を大きく受けたのは、男性より女性、正規雇用者よりも非正規雇用者、そして25歳~34歳の女性です。


職域のメンタルヘルス対策を話題にすることが多く、当社の使命は職域の健康経営ではありますが、社会全体で女性が仕事をする機会を増やしていく必要がありそうです。

先行研究によると、収入と健康には関係がありますが、収入が一定以上に上がるとその関係はプラトーになります。また、職の有無と健康の関係は、収入と健康より強いです。


喫煙は健康に悪く、喫煙本数と肺気腫には量反応関係があるのはよく知られていますが、減煙と禁煙の効果は雲泥の差、つまり、タバコを減らす健康効果がないとは言えないけれど、やめるより上等な方法はないということです。

仕事と失業の関係はこれに似ているのではないでしょうか。

もちろん産業ストレスの質と量に関する議論や評価、研究はこれからも重要ですが、仕事は産業ディストレスで人々の健康を奪うばかりではなく、コヒージョン、コミュニケーション、自己実現、エンゲージメント等、仕事をしていなければ得られない数々のウェルビーイングファクターを育ててくれます。


産業ストレスによるネガティブな影響を受けたくなければ、仕事をしないのが唯一最善の策になります。私は術前に麻酔の同意を取りますが、「全身麻酔による不適切な反応を完全に避けるためには、麻酔をしないという手段しかありません」と表現することがあります。飛行機事故に遭いたくなければ飛行機に乗らない手段しかありません。

家に引きこもっていれば交通事故には遭わないかもしれませんが、地震は避けられません。大型車が家に突っ込んでくる交通事故被害に遭うかもしれません。引きこもることによる健康上のデメリットのほうが圧倒的に大きいですよね。

COVID19パンデミックを含め、自然が直接、人々の健康を脅かすときには、仕事などいろいろな機会を奪って、間接的にも人々の健康が損なわれていきます。私たち社会は、誰も取り残さずに、踏みとどまろうとしたいです。全員が、すこしずつ傷を負うかもしれないけれど、致命的にはならないような作戦を練りたいです。

そして、戦争のような、自分の力ではどうにもならないけど、人間社会の力で制御することのできるはずの、人の健康を奪う事象を、地球からなくしたいですね。


私にとっては、仕事がウェルビーイングの源であり、仕事を継続したいからウェルビーイングを維持したいです。大金持ちになって、仕事をしないで一生暮らせるとしても、報酬はなくとも、世の中でなんらかの役割を果たしたいです。母親とか妻とか、そういうすごい役割があればよいけれど、私にはないので、社会に貢献して、私のウェルビーイングを保ちたいです。


話が逸れましたが、失業率と自殺者数の関係を見て、働くことの素晴らしさをあらためて痛感し、働く人のウェルビーイングをますます高めていこうという意欲を強く確認したというわけです。



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