適切な睡眠時間は存在するのか
私にとって、適切な睡眠時間はどれくらいですか?
どれくらい眠れば十分と言えるんですか? やっぱり7時間ですか?
外来や産業医面談、そしてプライベートの懇談などで、最も質問されるのがこれ、「理想の睡眠時間」です。
皆さん、決定的な数値は知らないけれど、心の何処かで、「理想の睡眠時間」があると信じていて、その理想の睡眠時間と現実の睡眠時間が近づくと最大に健康な状態だとイメージしているようです。
実は、この世に科学的に計算される理想の睡眠時間は、ズバリ「あります!」(スタップ細胞風に言ってみました・・・古い?)。
誰も見たことはないけれど、世界の何処かにきっといるという、幸せの青い鳥のような幻想ではなく、科学的に検証された事実として、健康文脈で理想の睡眠時間はあります!
反対に、後天的にトレーニングでショートスリーパーになれる、すなわち生まれ持った理想の睡眠時間を短縮できるなんてことは絶対にありませんので、そういう売り文句の詐欺には騙されないでください。
その事実に科学的な裏付け、すなわちエビデンスがあるかどうかは、出版されている論文などで確かめることができます。こちらの「健康になる技術大全」は、エビデンスとはなにかについての理解を助けてくれるでしょう。
理想的な睡眠時間を求める公式
それでは理想的な睡眠時間は何時間でしょうか?
もちろん理想的な睡眠時間には個体差があり、同一個体であっても、覚醒中の活動量などTPOによって、また、成長過程や年齢によって変化することがわかっています。私が相談を受ける相手は40代、50代の社会人が多いので、このコラムもだいたいそのあたりの働く成人に向けて発信しています。
右側が理想的な年齢に応じた睡眠時間で、左側が日本のリアルな睡眠統計です。理想と現実には、大きなギャップがあるのがわかります。
身長の成長が止まった20歳以上の簡単な理想の睡眠時間公式はこちらです。(4/24修正)
510+3✕【30-実年齢(歳)】(分)
私は50歳ですから、510+3✕【-20】となり、450分、7時間30分ですね。
個体ごとの理想の睡眠時間は、概ね正規分布すると考えられます。正規分布というのは、中央値と平均値、最頻値が一致する釣鐘状の分布で、中央値から上にも下にも離れるほどに人数が減っていく分布です。
この公式で求められる睡眠時間は、年齢ごとの分布の中央値だと思ってください。ということは、同じ50歳で睡眠時間が7時間で済む人は、8時間じゃないと足りない人と同じくらいの人数で、6時間で済む人は、9時間じゃないと足りない人と同じくらい珍しいということになります。
こちらの図を見ると、世界の多くの人、少なくとも半分より多くの人が8時間半以上眠っていることがわかります。
50歳の人間の最適な睡眠時間が7時間30分というと、多くの働く日本人は「非現実的だ」とびっくりしますが、異常なのは日本だけであって、世界の50歳はちゃんと眠っているのです。
電車の中で、会議中、授業中、わざわざお金を払って楽しむ目的で来たはずの映画鑑賞中、大のオトナがこんなにウトウトウトウトしているのは、世界で日本だけです。
8時間睡眠を5日間続けてみよう
個人にとって最適な睡眠時間は、こちらのコラムで参考にしている研究のように、外部からの刺激をシャットアウトした状態で、文字通り心ゆくまで眠り続けると、わかります。日々の睡眠負債を数日(この実験では4日)かけて返済し終わると、本来の理想の睡眠時間で安定します。
皆さんにはぜひ、ゴールデンウィーク、夏休み、お正月休みなどを利用して、この疑似実験を行って、自分固有の理想の睡眠時間を知っていただきたいところですが、そんな余裕があるならそもそも睡眠不足症候群になんてなってないというのが現実で、たまの休みでも返済し足りないで負債は残ってしまうでしょう。
だからこそ、知識としてこの理想の睡眠時間を知って、秒単位でも分単位でも日々の睡眠時間を伸ばせるだけ伸ばす、休日には極端に長く眠るという応急処置に励んでください。睡眠衛生強化週間を定めて、仕事や排泄以外のすべての時間を1日1回の睡眠時間に充てるように努力して、睡眠時間8時間✕5日間を1度でも実施してみてください。
必ず、睡眠の効能に気付くはずです。
土日を挟むほうがリーズナブルですし、連休ならもっといいでしょう。コアタイムの8時間は目が覚めてもベッドの中で眠ったふりを続けてください。できるだけ刺激を遮断して、光や音などが入らないような環境を作ります。窓があれば、遮光カーテンは必須です。簡単なスマートウォッチやスマホアプリで記録するのもおすすめです。
この5日間を経た上で、残存している睡眠への課題が、あなたの真の睡眠課題と言えるでしょう。
理想の睡眠時間と臥床時間
公式上の理想が7時間30分の私は、毎日、9時間臥床を目標にしています。
睡眠学を知る前は、私の睡眠偏差値はかなり低くて、30代前半のイケイケ時代(笑)は、4~5時間睡眠で睡眠薬を時々飲んで、仕事も遊びも楽しむスーパーウーマン気取りでした。今、思えば、恥ずかしい・・・
リテラシーを獲得した現在は、自分はややロングスリーパーだと仮定していて、平均8時間以上は眠りたいと考えています。
臥床時間が9時間あっても、7時間30分眠れるかどうかはわかりません。
私は普段からスマホアプリのSleep Cycleとスマートウォッチ&スリープセンシングパットのWithingを使っています。
Sleep Cycleによると、今朝までの一週間、平均9時間8分臥床して、その点では目標達成なのですが、実際の睡眠時間は目標の8時間には達していません。
皆さんも公式上の数値より長い時間、臥床することが必要だと覚えてください。
もちろん、これらのデバイスよりも精度の高い医療検査であなたの睡眠をバッチリ可視化することもできます。
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良かれと思って始めたサービスですが、こんなにも利用者の方々から反響があることに、正直、驚いております。
類似サービスはこれまで存在しなかったからでしょう。
とはいえ、簡易なスマホアプリでも効果はありと証明されていますので、下のFB投稿を参考に、まずはご自分で調査してみてください。
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