【睡眠効率】=【眠っている時間】/【寝てる時間】
皆さん、こんにちは。毎度、毎度、しつこく「とにかく、たくさん、寝ること」を主張している石田陽子です。
「寝る」と「眠る」は違うんじゃないの?とは、そのとおりでして、寝るのは臥床、横になることで、眠るのは睡眠することです。
とはいえ、睡眠と覚醒を瞬時に切り替える能力は人間になくて、それは人間のLIFEを守るためでもあります。
というのも、眠いな、眠りたいな、眠っちゃおうかなと思って、瞬間、寝落ちできてしまうと、それはそれでたいへん危険だからです。
さっきまで起立して覚醒していた人が、一瞬で臥床して意識を失うのは失神や気絶で、睡眠ではありません。
そうはいっても、日本の働く人々の多くが、ほとんど気絶の状態で毎晩、寝落ちしているのも事実ですが……
生物学的な睡眠を、交感神経活性を用いて精密に検出することができます。覚醒と睡眠の構造は、図のような波形で示されます。
同じ時間軸で3軸活動計によって体位を計測しているので、臥床時間や寝相を正確に計測することができます。
睡眠外来で行う検査は、睡眠 or 覚醒、REM睡眠 or NREM睡眠、NREM睡眠の深度、酸素飽和度、脈拍、無呼吸低呼吸イベント、いびきの大きさなどを同じ時間軸で並べて表記し、睡眠を評価します。
複数の波形を用いるので、ポリ(複数の)ソムノ(睡眠の)グラフィー(波形)で、ポリソムノグラフィーと呼ばれます。
検査について詳しくは、コラム「睡眠リテラシー第4回 Objective Summaryの見方」を参照してください。
図のように、私たちは、臥床時間中に、覚醒しています。
就寝して、最初に睡眠に入ってから、起床に最も近い睡眠からの覚醒までの間に起こる覚醒を中途覚醒といいます。睡眠中に目が覚めてしまう中途覚醒は、必ずしも、病的な状態ではありません。
臥床時間のうち、本当に睡眠している時間の割合が、睡眠効率です。
本当に睡眠している時間は、臥床時間から、寝付くまでの時間(睡眠潜時)と目が覚めてから起き上がるまでの時間と中途覚醒を引いた時間です。
睡眠衛生が健全な場合、睡眠潜時は15分程度です。秒で寝落ち、気絶のように眠るのは、睡眠障害の症状です。原因となる睡眠障害の大部分が、睡眠不足症候群です。
「寝付きがよい」という表現があるので、好ましいと感じている方が多いのですが、病的な症状です。
同様に、「寝相がよい」より、1時間に3~4回の寝返りをするほうが好ましいです。
「じゃあ、どうして『よい』なんて言うんですか?」という質問もよく受けるのですが、私は知りません。どうしてでしょうね、ご存じの方がいらしたら、ぜひ、教えて下さい。
「先生は、そう思うんですね?」「先生はどう思いますか?」というコメントも多いのですが、私が皆様に、リテラシーとしてお伝えする内容は、科学的に明らかな情報であって、けっして私の思想やフィクションではありません。
図の睡眠効率は75.5%で、睡眠効率の低い例です。軽症の睡眠時無呼吸症候群の患者で、息が苦しいので何度も目覚めてしまいます。
日本の平均睡眠効率は85%程度、他の条件が整っていれば、睡眠効率が高いほど、中途覚醒の少ない、よい睡眠です。
しかし、睡眠効率だけで評価はできません。わかり易い例は睡眠不足症候群の場合で、秒で寝落ちで睡眠潜時はゼロ、眠りの底からアラームで飛び起きるので最後の覚醒から起床までの時間もゼロで睡眠効率は高くなります。
睡眠外来受診を要する中途覚醒
中途覚醒は、睡眠課題の一つですが、記憶のあるなしに関わらず、臥床時間の間、一度も覚醒していない人のほうが稀です。中途覚醒には気づかないことのほうが圧倒的に多いです。たとえば寝入りばな、コクっと一瞬浅くNREM睡眠したあと中途覚醒しても、まだ一度も眠っていないと考えるでしょう。
夜中に目が覚めるという相談をよく受けますが、目が覚めること自体は異常ではありません。
気にしないで二度寝してください、目が覚めていても許されるギリギリまでゴロゴロしていてください。
しかし、受診が望ましい中途覚醒もありますので、ここで紹介します。
アテネ不眠尺度(AIS)の2番では、「夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?」の回答の選択肢が、「問題になるほどのことはなかった」、「少し困ることがある」、「かなり困っている」、「深刻な状態、あるいは、全く眠れなかった」と、【困るかどうか】で聞いています。
これは非常な良問で、受診の必要な中途覚醒の第一は「困っている」、「不快」、「すっきりしてない」中途覚醒です。
反対に、「困っていない」、「気にならない」、「すっきりしている」中途覚醒は概ね心配ありません。
これは中途覚醒時の気分による見分け方ですが、中途覚醒のタイミングも大事です。
まず就寝時刻から起床時刻までの臥床時間のちょうど真ん中の時点である、中央時刻から、睡眠を前半と後半に分けます。この睡眠の中央時刻は、時差ボケ対策でも、重要になる概念です。
寝入りばなの最も長いディープスリープ(最も深いNREM睡眠・N3)によって、眠気や疲れはあらかた解消します。大雑把に言うと、睡眠は前半に深く、後半は目覚めやすいものです。
そのため、睡眠の後半に目が覚めて、すぐ二度寝できるような中途覚醒は心配いりません。
睡眠の後半は、浅いNREM睡眠やレム睡眠が優位になり、誰でも目が覚めやすいものなのです。
REM睡眠から覚醒すると、夢の内容を覚えていることが多く、スッキリ目覚めた感覚がありますが、これは「睡眠完了」のサインではありません。
すでに外も白んできているいるし、眠気も強くないので、「年を取ると早起きになるな~、もったいないから起きて活動しちゃおう!」と考えがちですが、まだまだ二度寝のチャンスがあります。寝床から起き出さなければいけないギリギリまでゴロゴロしていてください。
このとき尿意を感じたら、トイレに行ってから、二度寝してください。トイレに行きたくて目が覚めるのではなく、自然に目が覚めたから、ついでにトイレに行くのは問題なしです。トイレから戻ったら、また寝てください。
ところが、強い尿意で睡眠が中断されるのは、睡眠時無呼吸症候群の症状です。
「不快」、「前半」、「尿意が先行」に当てはまる中途覚醒を経験する場合は、必ず、スリープクリニックを受診してください。
異常がなければ、前半に、最も深いノンレム睡眠N3から覚醒することはありえません。この覚醒は眠りから引きずり出されたような、嫌な感覚が残ります。
痛みや悩みで目が覚める場合も、受診してください。痛みや悩みが問題だと考えている方が多いのですが、尿意同様、知覚や思考が先行してN3から覚醒することは、ほぼ、ありません。知覚や思考が先行する、雷鳴頭痛のような例外の場合にも、確実に受診が必要ですから、中途覚醒で「困っている」場合は、受診してください。
睡眠外来では、この波形のように、精密な検査で睡眠障害を診断することができます。保険適用なら3000円程度の検査を自宅で受けられますから、少しでも不安があれば、すぐに睡眠外来を受診してください。
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